M  Y  S  T  E  R  Y    L  E  A  G  U  E


期限は72時間、ガラス張りの「檻」のなかで
7人の男女が挑む「仇討ちゲーム」
そしてその「外側」には
さらに驚天の大仕掛けが!

 

関田 涙

『晩餐は「檻」のなかで』

四六判上製本
290頁
1680
円(税込)

仇討ちのために用意された建物──「檻」。
いまここに七人の男女がいる。
彼らにはそれぞれ「殺人者」「被害者」「共謀者」「傍観者」「邪魔者」「監視者」
それに「探偵」という役割が与えられている。
たがいに自分の役割しか知らない。だから誰にも気が許せない。
やがて、ひとりが死体で見つかる──。
気鋭が満を持して書き上げた渾身の長編!


本文から少しだけ


 二〇××年五月十七日、正午。
 仇討ちに参加する七人は、ほぼ同時刻、舞台となる「檻」に入った。
 トラ、サル、イヌは、それぞれ別々に、窓のない車に乗せられ檻にやってくる。ヤギとヘビ、そしてクマとカメは各々事前に打ち合わせを済ませているが、素知らぬ顔をして姿を現した。
 檻が地理的にどの辺りに建っているのかは、定かではない。
 都内を出発し、移動に要したおおよその距離や時間から恐らく関東近辺、ブナやクヌギが鬱蒼と生い茂る周辺の景色や、空気の冷たさから高地であることは推測できたが、それ以上の情報は今のところ皆無だった。
 何しろ檻の内部には窓が一カ所もなかったのだ。
 脱走を防ぐ目的か、靴を脱がされて檻に入れられた七人は、各自建物のなかをみて回る。トラ、サル、イヌ以外はすでに何度か下見に訪れているはずだったが、そんな素振りはおくびにも出さなかった。
 小一時間ほど経った頃だろうか。それまで、積極的に言葉を交わすこともせず、よそよそしい態度をとっていた参加者がぽつぽつとホールに集まってきた。嫌でもこれから三日の間、ともにすごさねばならないのだ。いつまでも無視し続けるわけにはいかなかった。
 全員がホールに揃ったところで、自己紹介をしようという提案が矢追から出され、それぞれ名前だけの簡単な挨拶をした。
 ここでは基本的に本名、年齢、職業などを偽ることになっているため、細かな質問をしたところで大した意味はないのだ。
 したがって、彼らの興味は主に仇討ち制度や檻のことに移った。それで、部屋の壁がガラス張りになっている、扉に錠がついていないといった先ほどのやりとりがあったというわけである。
「で、どうする」
 自己紹介をして以来、一言も喋らなかった石橋秀一という青年が口を開く。
 年齢は二十代後半くらい。こざっぱりした顔立ちに、清潔な服装や髪型で、よくも悪くも癖がなかった。どこか浮世離れした雰囲気を漂わせているのも彼の特徴のひとつである。
「どうする、って、それぞれの役割に応じて動くしかねえだろ。お前がトラなら、とにかく三日間、懸命に逃げ切るこったな」と、窪寺が乱暴に答える。
 ここで、もう一度、整理しておくが、刑務官であるクマと、検察官のカメだけは七人全員が何の動物に相当するかを知っている。
 また、ヤギとヘビはお互いが何者かということは勿論、ターゲットとなるトラが誰なのかも承知していた。
 残る三人、死刑囚のトラ、民間人のサルとイヌは、ほぼ情報ゼロの状態でのスタートである。
「そういう意味じゃないよ。ここで生活するうえで、ある程度のルールを作っておかなくていいのか、っていいたいのさ」と、石橋がやや剥れた顔でいった。
「そうね。煙草を吸う人がいるなら喫煙場所を決めておかなくちゃ」
「ほかにも、深夜、騒がれたりするとうるさくて眠れないといったトラブルが生じかねませんから、消灯時間を定めておいてもいいかも知れませんね」
 西園寺と矢追が、続ける。
「面倒臭えな。たった三日なんだから、適当でいいんじゃねえのか」
「そういうわけにはいかないでしょう。ここは無法地帯ではないのですから、規律を守って皆が快適に生活できるようにするべきです」
「けっ。これから人が殺されるってのに快適も糞もないもんだぜ」
 窪寺の言葉に、皆は一様にハッとして黙り込んだ。