M  Y  S  T  E  R  Y    L  E  A  G  U  E


「選ばれますように」
浅間寺竜之介が
山深き忘れられた村で出会った
切なくも美しい殺人事件


柴田 よしき

『風精(ゼフィルス)の棲む場所』

四六判上製本
250頁
1680円(税込)

浅間寺竜之介はサスケとともに、京都北山をさらに分け入った
地図にない村≠ヨやって来た。
奉納の舞をぜひ見て欲しいという。
舞手はすべて若い女性で、祭りの前日に、近親を集めて最後の稽古舞が披露された。
悲劇は舞の終幕とともに始まった。
舞手のひとりが、衆人環視の下、刃物で胸を一突きにされて殺されたのだ。
「どう考えても犯人がいないんです」
竜之介はやがて、ある可能性に気付くが……。
美しくも切ない痛み、そして……。


本文から少しだけ

 

「ゼフィルスの舞」
 竜之介は、軽く頭を振って、妖精を見つめていた時間の不思議を静かに払い除けた。
「つまり、ミドリシジミの姿を模して踊る、ゆうことやな」
「僕も、ちゃんと衣装をつけて踊るのはまだ見たことがないんだけど、すっごく奇妙な踊りなんだよ」
「奇妙ってどんなふうに?」
「四人の女の子は雄なんだ。それで、前の年と、その前の年に舞手になった女の子たちが雌になる。雌はほとんど踊らないで舞手の周囲に立って歌うだけ」
「なるほど。ゼフィルスは雌雄で翅の色や紋様が違うものが多いからな」
「でもね、雌は全部で六頭しかいないんだ。変だと思わない? 毎年の舞手は四人だよ。それなのに、前の年とその前の年の女の子を合わせて六人しかいないなんて」
 竜之介は、青年が何を言いたいのかわからずにただ青年の顔を見ていた。
 青年は、目を細めて西日に眩しそうな顔をしていたが、竜之介の視線を感じたのか、ひどく秘密めかした顔つきになった。
「四足す四がどうして六になっちゃうのか、おじさん、わかる?」
「さあ、わからないな」
「死ぬからさ」
 青年は、こともなげに言った。
「舞手になった四人の女の子の内ひとりは、必ず死ぬんだ……一年以内に。だから四ひく一は三。三足す三で六」
 青年は、夕暮れの空に溶け込むように声で笑った。