M  Y  S  T  E  R  Y    L  E  A  G  U  E


美少女代理探偵
根津愛シリーズ最新作

前代未聞の密室トリックを前に、
根津愛を襲う最大の危機!

愛川 晶

『巫女の館の密室

四六判上製本
490頁
1890円(税込)

根津愛が桐野とともに訪れたのは奥会津の秘境にある友人の別荘。
そこでは十年前に不可解な密室殺人事件が起きたという。
現場となった離れは、急斜面の山の途中に洞穴をくりぬき、
そこに埋めこまれたかたちの、窓のないコンクリート製の箱のような部屋。
唯一の出入り口は絶対に細工が不可能な特殊な構造をしていた。
そこに横たわる他殺死体。犯人の姿はどこにもない。
完璧な密室から、犯人は一体どうやって脱出したのか。
この謎が解けないうちに、根津愛は突然失踪してしまう。
拉致されたのか。
必死で捜し回る桐野だったが、その彼の前に、また新たな惨劇が……。


本文から少しだけ

 

 ……宛先を確認してみて、桐野はまた驚いた。『netsu shinzou』。問題のメールは愛の父親に宛てられたものだったのだ。
 桐野は大急ぎで、そのメールを開いてみた。

『お父さん 昨日出がけに会えなかったので、念のためにメールしておきます。
  奥会津の坂岩村にある樫村愉美ちゃんの別荘は、静かで、すごくいいところでした。もともと温泉宿だったところを改築したから、お風呂がものすごく広い! 今日はちょっと頭痛がして、気分も悪かったんだけど、お湯につかった途端、シャキッとしました。
  そうそう。とっても珍しい体験をしました。この家には、裏山の急斜面を堀った人工の洞窟の中に建てられた離れがあるのですが、ちょうど十年前、そこで不思議な事件が起きたんです。
 今日の午後、キリンさんと二人で、その建物に入ってみたのですが、案外すんなりと謎が解けてしまいました。おかしな偏見に囚われてしまうからわからないだけで、与えられた条件をすべてきちんと把握すれば、自然と真理は見えてくるはず。
  ただ、狭い意味で考えれば、ミステリー史上初のトリックかもしれない。少なくとも、犯人が密室を作った動機だけは、間違いなく前代未聞でしょうね。
  明日は仙台へ戻ります。そうしたら、お父さんにも挑戦してもらいますね。また、簡単に解決されちゃうかな。
  では、おやすみなさい。会津は柿が名産だと聞いたから、お父さんの好きな干し柿を探して買って帰るつもりです。ご期待ください。

                                                                 愛』

(ミステリー史上、初のトリック……)
  その部分がまず衝撃的だった。
  メールの中で、愛は『殺人』という単語を一度も使っていない。これはもちろん、父親を心配させないための配慮だろう。だからそこを補って考える必要がある。
(すると……密室殺人に、まだ未使用のトリックがあったというのか)
  そんなものが本当に存在するのだろうか。『狭い意味で』と、愛は一応ことわっているが、それにしても……。
(そして、あの愛ちゃんが『前代未聞の動機』と断言する犯人の動機とは、一体……おやっ?)
  マウスを操作しているうち、愛が送信したメールにさらに続きがあることがわかったのだ。
  署名のあとに、二行。
(えっ? そ、そんな……)
  それを読んだ時、桐野はめまいを感じた。愛の失踪の事実を知らされた時と同じくらい強い衝撃を受けたのだ。
  父親に宛てた追伸の中身は、何と……。