M  Y  S  T  E  R  Y    L  E  A  G  U  E



「人はどうして眠るのですか?」
ついにわかってしまった壮大なその仕組み
『邪馬台国はどこですか?』『新・世界の七不思議』の著者が
こんどは未来を舞台に「夢」に挑む!

鯨統一郎
『MORNING GIRL』

四六判上製本
280頁
1680円(税込)

人類の睡眠時間は日ごとに減っていった。
地球では放射能汚染が広まり、
オゾンホールからは紫外線が容赦なく降り注ぐ。
スペースアイランド飛翔≠ナも、
睡眠時間減少は変わらなかった。
そこで科学者たちが集まってその謎を解こうとするのだが……。
すべての鍵は「眠り」にあった!


本文から少しだけ


 スティーヴ・レイン〈23歳。男性〉はとうとう人体コンディショナーのエドナ・ウィンタース〈57歳。女性〉の元に相談に行った。
スティーヴ「このところ眠れなくて」
 スティーヴはハンサムだが、うっすらと無精髭が生えているから少しだらしない印象を見る者に与えるかもしれない。実際、スティーヴは少しだらしなかった。8年前には闇フロンガスの製造に関わって処罰を受けたこともある。だが今は、スティーヴ・レインとアーサー・J・クック三世という2つのペンネームを使い分ける仮想現実物語の流行作家だから、あまりとやかく言われることはない。それどころか地球を離れる頃から神がかった作品を2作立て続けに発表して、VRSの大作家と目されるようにもなっている。スティーヴは物語の神と交信している。そんな賞賛とも噂ともつかない言葉が世間で囁かれてもいる。スティーヴは小さい頃から星空を見るのが好きだった。飛翔≠ヨの申し込みも、星好きが高じてのものだ。
エドナ「このところ≠ニはいつ頃なの?」
 エドナはその太った躰を揺するようにしてスティーヴに訊いた。丸い大きな顔には何本もの皺がある。
スティーヴ「もう1週間です」 
エドナ「睡眠時間はどれくらい?」
 男のような声でエドナは訊いた。
スティーヴ「3時間ぐらいです」
エドナ「3時間か」
 エドナは考えこんだ。
 空中に漂う小型コンピュータにデータが音声入力されている。
エドナ「眠れないということは、ベッドには入るのね?」
スティーヴ「そうです。でも寝つけなくて」
エドナ「何か心当たりは? 作品のことで悩んでいるとか」
 画一的な発想をしないでくれとスティーヴは思った。
スティーヴ「悩んでいません。むしろいい調子です。着想がどんどん湧いてくる」
エドナ「それは頼もしい」
 エドナはスティーヴの言葉を半信半疑で聞いた。着想がどんどん湧いてくるなどとは誇大妄想の気味があるかもしれない。
スティーヴ「でも眠れないんです」
 原因も判らないのに眠れない夜が続く不安を判ってもらえるだろうかとスティーヴは祈るような気持ちでエドナに対している。
エドナ「あなたは朝型? それとも夜型?」
スティーヴ「朝型でしょうね」
 体温のピークが早めに来る人は朝型、遅めに来る人は夜型になる。
エドナ「だったら夜は眠れる方なのね」
スティーヴ「ええ。それなのに眠れない」
エドナ「最近、あなたみたいな人が多いな」
スティーヴ「軽いエイズでしょうか」
エドナ「ちがうわね。ここでエイズに罹るなんてありえないでしょ」
スティーヴ「そうでした。では不眠?」
エドナ「そう」
スティーヴ「やっぱりどこか無理があるのかな。スペースアイランドで暮らすというのは」