M  Y  S  T  E  R  Y    L  E  A  G  U  E


ミステリー史上初の
1人8役に挑戦!
鯨版「罠」は最後まで油断できない

鯨統一郎

『ふたりのシンデレラ』

四六判上製本
320頁
16
80円(税込)

わたしはこの事件の証人です。
同時に、犯人です。
そして、犠牲者でもあります。
それどころか、探偵役でもあります。
加えて、ワトソン役も務めます。
もちろん、記録者でもあります。
さらに、濡れ衣を着せられる容疑者でもあります。
最後に、共犯者でもあるのです。
「シンデレラ」がふたりなら『罠』も2倍!


本文から少しだけ


             *

 炎が襲ってくる。
(逃げなければ!)
 わたしは必死で脚を動かす。でも、動かない。
 脚が動かない。
 炎は容赦なくわたしに迫ってくる。
(あ!)
 炎の中からナイフが飛び出してくる。
(どうして?)
 火事の中で、誰かがわたしを殺そうとしている。
 わたしは逃げようとするが、躰が動かない。動かそうとしても、どうしても動かない。
 ナイフがわたしの躰にぶすりと突き刺さった。
(殺される!)
 なんとしても逃げなければ。
 だけど、逃げられない。躰が動かない。
 ナイフはわたしの躰を切り刻む。
 もう、逃れることはできない。
 意識が遠のく……。
 さようなら、わたしの人生……。

            *

 目が覚めた。
 夢を見ていた。
 火事の中、必死に逃げている夢。そして炎の中から襲ってくるナイフ……。
 わたしは目を開けた。
 まっ白な天井が目に入る。
(ここはどこ?)
 頭がぼんやりしている。
「夕華」
 誰かの声がする。
 夕華?
 わたしはわずかに視線を動かす。
 繊細そうな男性の顔が見える。
 細い銀縁のメガネをかけた男性だ。
「気がついたかい?」
 男性が落ち着いた声で言う。
 わたしは頷く。